八十八夜を過ぎて 京都 茶摘み

八十八夜も過ぎて夏が近づいた

迫った太陽は肌を 照り付けて 笑う

茶の若芽は 日に透けていた







友人の一人が、歌集を持ってきて
朧月を歌った

なのはな ばたけに いりび うすれ みわたす やまのは かすみ ふかし

この季節は霧がよくでるものだ

そしてかすみははぼんやりと 月を縁取る
この霞がお茶の味を深くする
みどりはかぎりなく輝いていて

山藤がまるでぶどうのようにたわわに花をつけて
咲いていた

湖を抜け、山を抜け、小川の流れる谷あいの村に来た

京都府和束町 
宇治茶として世に知られるお茶のほとんどはこの和束で生産されている
宇治茶ブランドではなく和束茶ブランドをたくさんの人に知ってもらいたい
そんな想いから、日本全国、海外にまで和束の茶農家たちは精力的に宣伝、活動を行っている
毎年初夏には、この地で茶摘をするのがわたしの恒例行事となっている今年は品評会に出品用の茶を摘むというのが仕事だった

手摘みの茶は 、そして手もみの新茶というのは 極上のうまみと爽やかさをもつ
丁寧に摘み取られた葉には 丁寧な味がする

その茶畑の入り口には 大きな 石の鳥居が立っていた

傾斜のきつい茶畑の横には 古い 大きな 神木と 石碑が ある
八坂の神様だ

茶摘をする前に 祈りを捧げる  なんでもないように見えるその儀式は
今日一日の仕事への大切な誓い


お茶は製造の過程でほとんどの水分を飛ばす為、一パッケージの茶を作るのにも
相当の量の茶葉を摘まなければいけない。
始めはがやがやと 騒いでいた私たちも
いつの間にか 真剣に 一針二葉の茶を摘んでいた
この行為は限りなく瞑想に近いものがある

途中で気づく、鳥や虫の存在、音、匂い、風虫も土も鳥も私たちも皆おなじだということを気づかせてくれる
出された茶団子や、皆が作ってきたおにぎりで一服をするのもなんと楽しいんだろう




















途中、友人は尺八を吹いて 私たちは青い空と 神様の巨木を仰いだ

土に触れて働いた日はいつも 心地よい疲れが訪れる

日の暮れる頃に 温泉につかって 、とても幸せな気持ちになった





















お土産に持たせてくれた 新茶の一杯は

現実に帰った、街での日々の中でも
風の色や 空の音を 自然のいっぱいの 生命を 思い起こさせてくれる








皆さんも 店頭にならんでいる新茶を見かけたら
ぜひ この初夏の味を 感じてみてください
ティースプーン二、三杯程度の茶葉に70ml程度のお湯で淹れます。
(お湯はやかんの蓋をとり、数分沸騰させてカルキを抜きます)
小ぶりな急須で、 湯冷ましをして 70から80度に下げたお湯が
お茶の甘みをひきだしてくれます
30秒から45秒程度待って 急須はあまり揺すらず、最後の一滴まで出し切ります

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