パナンペ放屁譚 アイヌ民譚集に触れる
旅先には暖かくてゆる~い南国ばかり選んでいる私ですが、この度、初めて北海道へ行ってきました。
街歩きを始めて5分もたたないうちに、雨対策ななんぞ施されていない私のブーツはおでんのがんもどきのようにじゅぼじゅぼに。早速、札幌駅前のABCマートで雨雪加工されたブーツを購入しました。北国をなめてはいけません、凍死しますからね。
札幌駅から本数の少ないバスに乗り込むと、景色はどんどん田舎と化していきます。
蛇足ですが、私、イギリス人の英語教師マイケルに、「君はアイヌ民族か?」と聞かれたことがあります。日本をよく知るマイケルですが、私のような顔立ちの日本人を見たことがなかったとのこと。
白樺林を縫うこと1時間。もわもわと霧を産む山々に囲まれた、札幌市アイヌ文化交流センター札幌ピリカコタンに到着しました。
小さな館内には伝統衣装や民具などがあり、外にはアイヌの家やトイレも再現されていました。そこで面白かったのがアイヌの昔話、「パナンペ放屁譚」。
=============================
パナンペがあった。ペナンペがあった。
ある日パナンペがコクワを採りに山へ行くと、可愛らしい小鳥が
カニ ツンツン ピィ ツンツン
カニ チャララ ピィ チャララ
と鳴いた。パナンペはすっかり感心してその小鳥を拝むと、小鳥はパナンペの口の中へ飛び込んで、腹の中へ入ってしまった。
パナンペは家に帰り、妻に、屁をひるから聞いてくれというと、妻は呆れてチェッと舌打ちをしながらパナンペを横目でにらみつけ、
「お前一人でコクワを食べたあげくに、腹具合を悪くして屁をもよおすんだろう。汚らわしいや!屁なぞ聞きたくない」
と答えた。パナンペは笑って、
「お前そんなことをいいながら、俺が屁をひったら感心するなよ」
と言った。パナンペの妻は怒って口を尖らせていた。パナンペが少しいきむと腹の中で、
カニ ツンツン ピィ ツンツン
カニ チャララ ピィ チャララ
と屁の音がした。パナンペの妻は、どうしてまあそのような好い屁が出るのだろうとすっかり感心し、
「もっともっと聞きたいな。ひって聞かせておくれ!」
とパナンペにねだった。パナンペも喜んで幾度もその屁をひって、退屈もせず、毎日一緒に笑い暮らしていた。
噂は早いものだから、お殿様のお耳に達し、パナンペはお殿様の御前にて屁をつかまつるべしとて、召し出された。首尾よく屁が出て殿様は大喜び。パナンペはほうびをもらって裕福な長者となった。
隣に住んでいたペナンペ。同じくらい貧しかったのに一体どうしたことかとパナンペに尋ねると、パナンペは家に招いて食事を与え、お前も同じようにやったら金持ちになれるよと教えてあげた。
ペナンペはパナンペの裕福ぶりに大いに嫉妬し、
「俺を出しぬきよって、今に見ていろ」
と悪態をついて、パナンペの家に小糞と小便をたれて帰っていった。
ペナンペもまた、屁を放るのをお殿様が聞きたく思って召出しの沙汰があった。大喜びでお殿様の御前にまかり出て、御馳走をどっさり食べ、パナンペ以上に大きな屁をひったなら、もっとどっさりほうびを頂けるだろうと思ったので、食べて食べて腹が詰めかますの様になった。
屁を命じられると、今まで食べたこともない御馳走を腹に余るほど食べたものだから、腹をこわして大きな下痢糞の山ができ、糞がバタバタと飛び散った。お殿様もお家来衆も糞の中に埋れた。ひどく殿様たちは腹を立てて、
「実にペナンペは悪魔であったわい」
と言いながら、皆でペナンペを叩いたり斬ったりした。
ペナンペが泣き叫びながら逃げてくると、それをみた妻は、ペナンペが赤い小袖を着て、唄を唄いながら来るのだと思ったので、身につけていたぼろをそっくり炉の中に入れ、まっ裸でいると、思いもよらずペナンペが刀の傷から血が出て赤かったのであった。
かくて、着物もなく、寝れば背中を合せ、腹が冷えれば腹を合わせて、
「決して人の言葉に逆らったり、欲ばったりしてはならない」
と言いながら、ペナンペはつまらない死に方をしたのであった。
一方のパナンペはお殿様から招かれて、屁を命じられては、いつまでも長者で暮らしたとさ。
=============================
結論。
どこの地域の子どもも、うんちが好き。
コメント