空白


古い額にひっそり入っている油絵が壁にある。障子から西日が入り、人工的な木漏れ日が目に入る。その絵を見ているといつの間にか手のひらが濡れてきた。汗だろうか、汗にしては新鮮な感じがする。無意識に口が半開きになり、その手のひらを観察すると、手の中の汗がまるでアメーバのように見えた。斜めになっていた頭を起こすと、またその油絵に目が届き、その絵の方へ足をゆっくり前に出し歩き始めた。まるでエスカレーターに乗っているかのように一定の速度で歩み、足の裏が濡れるのに気がついた。その理由を突き止めようと左足を軸に両腕をくの字にして、右足の裏を確認すると、油絵の絵の具が足の裏にべっとり付いていた。あまりにヌルヌルしていたので軸の足が滑り尻餅をついた。
まるでずっと見ていたかのように一人の人間が影の中から見ている視線を感じた。私の瞳孔がさらに開き、眼の前の物が全て溶け始めた。そこに立っていたジャカランタの花が紫色の奇妙なミミズのように滴れるのを熟視していた。私を観察していた人間は色を持たず、まるで影の一部かのよう無名な木に寄りかかり立っていた。片手と顔だけはぼやけていたが私の視界に入っていた。

デイドリームではなくハルシネーションというやつだ。
セービングはイマジネーション
私は常にイリュージョン
2+25

終わらない

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